読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

The two drops of oil

本と語学とアニメと映画、時々旅行。他にもいろいろ普段人前でしゃべり足りないことを書いてます(´-`*)

太宰治『晩年』

太宰治の処女作品集にして遺書のつもりで書かれたという『晩年』

発表時には27歳だったというのだから、私とは同い年だったことになる。

どれだけの感受性を以てすればこんなにも美しく繊細な文章が書けるのだろうと、

ため息をつかずにいられません。

 

晩年 (新潮文庫)

晩年 (新潮文庫)

 

太宰の作品に繰り返し出てくる、絶望感、死への憧憬、息を吐くように嘘をつき、道化を演じることへの嫌悪、そんなものがじわりじわりと、真綿で首を絞めるような圧迫感で迫ってきます。

 

“死のうと思っていた”

そう始まる『葉』。

お年玉に夏物の着物をもらって、夏まで生きていようと思った、という表現があるのですが、この気持ちがわかる人、案外多いのではないでしょうか。

『葉』そして『魚服記』と何度も何度も、“役に立てないのになぜ生きる”“死ぬべきだ”
と唱える。しかしまだ僅かに生への未練だったり、死にきれなかったことへの責任みたいなものの狭間で揺れ動いている機微な心象が伝わって来て悲しくもとても美しい作品だと思いました。

『彼は昔の彼ならず』『道化の華』のように、確固たる自己を持たず他者の求めるように、気に入られるようにふるまう、滑稽さを風刺した作品も面白い。きっとそんな風に振る舞う自分を許せなかったのだろうな。

『猿ヶ島』は青い目の人間たちと私たちの出会い。見ているつもりが見られていた。

海外生活をしているとこの事象ってとってもよくわかる。お互い見てるのよね。それでいいじゃない、と思うのだけど、太宰にとってはそうじゃないのよね。現代人としての感覚だと、見世物にされている黒人女性との出会いを描いた『逆行』と対になるとも思ったが、当時の人々にとってはどうだったんだろう。黒人は見世物で当然で、我々自身が見世物になることには耐えがたい嫌悪感を抱いていたのではなかろうか。

 

とても面白く読んだのだけれど、途中気分がシンクロしてきて、ちょっとまずいなぁ、

と思って休み休み読みました。(笑)

なんだか散文的な感想になってしまいましたが、今日はここまで。